4日前SSの続きで前半主人公視点、後半ゼン視点の誕生日当日のお話です。
「それで、何か食べたいものは?」
「どうせ昨日も一昨日も碌な物を食べていないんだろう。何か作ってやる。」
そう声がかけられる。
「プリン!あ、ごめん今日はプリンはいいや。店長のおすすめでお願いします!」
リクエストを聞かれてついプリンと言ってしまったが、今日は別にデザートはあるのだ。
「バカ……何で昼食のリクエストを聞いているのにプリンがまず出てくるんだ。」
そんな声が聞こえてきたけれど、聞こえなかった事にして思考を目の前のPCへと戻す。
1月13日、ゼンの誕生日、私はゼンの家のダイニングテーブルにでPCを広げて仕事をしていた。
金曜日のファーレイへの定例報告会、準備は万端と思っていたはずが、不足点を指摘され明日までに追加資料を提出ししなければならなくなってしまったのだ。
そのせいで、結局土日が潰れてしまったどころか、ゼンの家にPCを持ち込む破目になってしまっていた。
でも、あと少しだし、お昼までには終わるはず……
終わらせてから来ることも考えたが、遅れるなら来なくていいとか言われたらどうしようと思いとりあえず約束の時間通りに来たのだった。
🎂
しかし、あいつはプライベートで俺の家に遊びに来たいとか言っていなかったか……。
だからこそ、一日スケジュールを空けたというのに。
料理をしながらも、必死な形相でPCに向かう彼女の事をつい考えてしまう。
資料の追加作成は、土日を使えば終わる範囲に納めたはずだ。
なのにあいつはどうやらケーキを作っていたせいで、資料作成を今日まで持ち越したらしい。
「実はまだ追加資料の作成が終わって無くて……ちょっと作業させて貰っても良いかな……」
そう、家にあがるなり言ってきた。
「仕事なら帰れ」
そう口から出そうになったが、本当に帰る姿を一瞬想像してしまい口に出すのを躊躇った。
「あと、冷蔵庫貸してください。」
その一瞬の逡巡に気付かなかったあいつから中身を告げられずに渡されたのは、どうみてもホールケーキなのに、箱からして店で買ったものではなさそうだった。
まさか、仕事よりもケーキ作りを優先して、俺の家にまで仕事を持ち込むとは。
そういえば随分と重要そうに「計画がー」とか言っていたな。
誕生日が目出度い年でもないし俺の誕生日などどうでも良いのに、仕事よりもケーキを作るのを優先するなどバカとしか言いようがないが、どうやらあいつにとっての優先順位はそうなっているらしい。
減ってしまった今日のプライベートの時間分の価値が、冷蔵庫に入れられたあの箱の中身には本当にあるのだろうか。
その分の価値があってもなくても、あとでこの代償は支払って貰おう。
そう心に決めて、出来上がった料理を「終わった!!!」と万歳している彼女の前に並べた。
自分の誕生日よりもプライベートで二人で過ごす時間の方が大事なCEOのお話でした。

