心を込めて、大切な貴方にサプライズを。
1月13日はゼンの誕生日。
折角の誕生日だからと私は何かサプライズをしようと思い立った。
サプライズ…何をしよう?
私は頭を悩ませていた。
この前試しにケーキを作ってみたらとんでもなく失敗をしてしまったため、ケーキ作りには正直自信を失ってしまった。
何か他に手作りはできないかと頭を悩ませていたところ、ふと「ある考え」が思い浮かんできた。
ーーそういえば以前、私はゼンにカクテルを作ってもらったことがあったな。
(カクテル…作ったことはないけど、以前取材させてもらったあそこのバーの店長さんに教わったら作れるかもしれない!)
『せっかく作るんだから、何かゼンにぴったりのものを…』
私はカクテルの種類と、作り方について調べ始めた。
そしてバーの店長さんに事情を伝え、カクテルの作り方を教えてもらえるように頼み込んだところ、店長さんは快く引き受けてくれた。
こうして私は誕生日の直前まで店長さんからカクテルの作り方を指導してもらったのだった。
誕生日当日に、ゼンに夕方から予定を空けてもらうように頼むことも忘れずに。
*・*・*
ーー誕生日当日。
私は夕方、ゼンに電話をかけた。
すると3コールする前に電話に出てくれた。
「どうした?」
『ゼン!いきなりなんだけど、今から一緒にバーに行こう!』
「…なぜバーなんだ?お前、酒飲めないだろう?」
私はなんとかサプライズがバレないよう、必死で頼み込んだ。
『お酒にまた挑戦してみたいの!一緒に来て!お願い!』
「…お前が一体何を企んでるのかは知らないが、分かった。ついていってやる。」
電話口でギクリとしつつも、動揺が伝わらないようになんとか誤魔化した。
『じゃあ、バーの前に集合ね!』
「ああ。」
そうして電話を切ると、私は事前に準備をしていた道具を持ち、しっかり前留めできるコートの下に借りたバーテンダーの制服をこっそりと着て家を出た。
バーの入り口に着くと、ゼンは一足先に到着していたようだった。
『ゼン、早いね!お待たせ!』
「いや。今着いたところだ。」
『じゃあ、入ろっか!』
「ああ。」
互いのコートを簡易クローゼットにかけ、バーテンダー姿でカウンターに入った。
椅子に座るゼンを目の前にして、私は宣言した。
『今から、ゼンにカクテルを作ります!』
「…お前が?」
ゼンは少し目を見開き、珍しく驚いた表情を見せた。
『うん!この日のために、必死に練習したの!』
『ちょっと待っててね!』
ブランデー45ml…
スイートベルモット15ml…
カクテルオニオン1個…
それぞれの材料をバー・スプーンで慎重にステアして…
ゼンの前にカクテルグラスを差し出した。
ゼンのチャームカラーでもある赤くて光沢のある色が美しいカクテル、それは…
『お待たせ!キャロルだよ!』
私がゼンに作ったのは《キャロル》というカクテルだった。
「ほう、キャロルか。…お前らしいな。」
ゼンはフッと鼻で笑うと、口元に笑みを浮かべた。
『ステアのさじ加減、大変だったんだよ!さあ、どうぞ!』
「…いただきます。」
ゼンはひと口だけカクテルを飲むと、コトリとグラスを置いた。
「…今までに飲んだことのない味だ。」
『えっ!?それって不味いってこと!?』
バーの店長さんではGOサインが出たのに…!私が慌てふためいていると、ゼンは更に口角を上げた。
「いや。今までに飲んだことのないくらいに美味いという意味だ。」
『ほ、本当…?』
「ああ。俺は嘘はつかない。」
あのCEO様がお気に召しただなんて …!
私は嬉しくてたまらなくなった。
ゼンはそんな私の様子を満足そうに見ると、カクテルをゆっくりと飲み干した。
「俺の誕生日、祝ってくれたんだろう?」
『そうだよ!サプライズしたくて。』
「キャロルには《賛歌》という意味合いがある。サプライズにしてはよく考えたな。」
たしかにキャロルには、「賛歌」という意味合いがある。
私が数あるカクテルの中でキャロルを選んだ理由は、まさに今日のサプライズに「賛歌」がぴったりだと思ったからだ。
『うん!ゼンのために、一生懸命用意したんだよ!』
するとゼンは立ち上がり、私をカウンター越しから抱きしめた。
「ありがとう。」
『…っ!』
体が密着し、耳元に低くて心地よい声が響いてくる。
「さっきのサプライズも上等だが、俺にとっての最高のプレゼントは…お前だ。」
ゼンはそういうと、真っ赤な顔をした私の掌をすくい、1つキスを落とした。
掌のキスを合図に、キャロルのように芳醇で、甘い夜が幕を開けようとしていた。
ーーキャロルのもう1つのカクテル言葉は…「この想いを君に捧げる」。
Happy Birthday, ZEN.


