ケーキの代償
「それで、何か食べたいものは?」 「どうせ昨日も一昨日も碌な物を食べていないんだろう。何か作ってやる。」 そう声がかけられる。 「プリン!あ、ごめん今日はプリンはいいや。店長のおすすめでお願いします!」 リクエストを …
「それで、何か食べたいものは?」 「どうせ昨日も一昨日も碌な物を食べていないんだろう。何か作ってやる。」 そう声がかけられる。 「プリン!あ、ごめん今日はプリンはいいや。店長のおすすめでお願いします!」 リクエストを …
「6歳差。ゼンが高校ぐらいの時に私はランドセルを背負ってたってことよね」 新年早々何を言い出したかと思えば歳の差の話だ。コレばかりは何年思っていようが変わることの無い差だ。何かに思い耽る度に彼女の口から言われるが、自分か …
誕生日がその人にとって特別な日。だからその日は大切な人と過ごしたい。私の誕生日にゼンと過ごせるならそれはとても嬉しいことだし、彼の誕生日も私は一緒に過ごしたい。 そう。──今日はゼンの誕生日。はじめは、今日くらいはゆっく …
初心者向け、との触れ込みは一体なんだったのだろう。決して広くないキッチンの作業スペースにはケーキになるはずだったものが2つ並んでいる。ぺしゃんこにつぶれたそれは、甘い香りだけを放っていた。大晦日も元日も関係なく飛び回って …
さくさくと先陣をきって歩く様は勇ましいが、多少危なっかしい。らしくもなく手を差し伸べてやりたくなるが、それもどうも癪だ。「ほら、ゼン。早くしないとただの散歩になっちゃうよ」 こちらの思っていることなどお構いなしに、くる …
子どもの頃とは違い、この歳になればもう“誕生日”を特別意識することはなくなったように思う。幸いにも、いつだって祝いの言葉を寄越す人間がそれなりに居る環境に俺は在った。しかし、その言葉に次第に果たすべき責を感じるようになっ …
新年になり、年頭所感や年間計画に伴う会議など、忙しい日々が始まっていた。子どもの頃は自分の誕生日をお祝いしてくれることを、浮き足立つような気持ちで待っていたことを思い出す。そんなことを思い出したのは、彼女が新年の挨拶回 …
「そんな小さな声で話さなくても……!」 電話の相手は陽気な声で私を否した。私はエレベーターホール観葉植物の影に隠れながら声のボリュームを最大限に抑え、吐息交じりにケンさんをとがめる。葉の間から差し込む黄色い日差しが眩しい …
辺りに漂う甘い香りを胸いっぱいに吸い込む。ここでは、肌を刺すような冬の寒さも張りつめたような冷たい朝の空気も、全く無縁のものだ。 後ろを振り返るとブルーグレーの瞳と視線がぶつかる。ゼンは入り口で立ちつくしたまま、訝し …
1月12日。 例の事件が終息してから半年たった。 恋花市は今まで恐怖に包まれていた。しかし、ある日を境に事態が急速に良い方向へと向かった。幸せと笑顔が戻り、街に活気が溢れていた。 しかし、そんな幸せに満ちた世界で、一人だ …
A week before __________ 「CEOは誕生日を祝われるのがお嫌いなんです」年始の挨拶にファーレイを訪れた帰り際、ケンさんに確認したゼンの誕生日関連のイベントの有無。彼程の立場の人ならパーティーでも開 …
1月13日はゼンの誕生日。折角の誕生日だからと私は何かサプライズをしようと思い立った。 サプライズ…何をしよう?私は頭を悩ませていた。 この前試しにケーキを作ってみたらとんでもなく失敗をしてしまったため、ケーキ作りには正 …
ゼンの誕生日まであと1日と迫った1月の半ば――りんとした冬の空気がとげとげしく肌に突き刺さり、外出はおろか、行動することすら億劫になってしまう季節。でも、私の心臓はドキドキと脈打ち、活気に満ち溢れていた。(明日は奮発して …